編集：CoreTech System技術サポート部　チーフエンジニア　林哲平

概要

一般的にファスナーのサイズは小さいため、製造のばらつきの制御が簡単です。しかしながら、大きくて複雑な部品を製造するとなると、考えられるばらつきを予測し、製造の過程で生じる反りやショートショットなどの成形欠陥の問題を克服するのに役立つ適切なツールが必要となります。この事例において、STANLEYチームのタスクは、高品質のファスナー製品を製造するため、改良されたゲートシステムを作成することにありました。

課題

• 最適な性能を得るため、バルブゲートの位置を確定する。
• ショートショットの発生を防ぐ。

導入ソリューション

Stanley Engineered Fasteningは、Moldex3Dを使用して、研究開発の初期段階で製品設計を解析しました。シミュレーションの結果から、最適なバルブゲートの数と位置を決定し、コールドランナーシステムの設計を最適化して流動バランスを取ることができ、バルブゲートのコスト削減に役立ちました。

成果

• 設計初期に最適なゲート位置を特定する。
• 修正コストを節約し、プロジェクトをスケジュール通りに進める。
• ショートショットの問題を解決する。

ケーススタディ

ツール設計のベストプラクティスに基づくと、適切な流動を確保するためには120mmごとにゲートが必要です。当初、STANLEY Engineered Fasteningチームは、この基準に基づいて3つのバルブゲートを選択しましたが、最適な性能を得るために設置する位置を決定する必要がありました。また、プラスチック射出成形の過程で正しいゲート位置が選択されていなければ、ショートショットの欠陥が発生するおそれがあります。この問題を克服するため、STANLEYチームはMoldex3Dでゲート寄与度を確認し、これに応じてゲート位置を調整しました。

Moldex3Dで数回の反復を実行した後、STANLEYチームは、図1および図2に示すように、最適なバルブゲートの数（3）およびゲート位置を特定しました。

図1　初期のゲートシステム（バルブゲート）

図2　初期のゲートシステム（バルブゲート）およびそのメルトフロントタイムのシミュレーション結果

バルブゲートのコストが高いため、顧客はより経済的なソリューションを求めています。そこでSTANLEYチームは、よりバランスの取れた流れを備えたランナーシステムを特定するため、Moldex3Dによる解析・検証を行いました。図3は、スプルー入口からゲート2までの距離が、ゲート1と3に比べてはるかに短いことを示しています。そこで溶融樹脂が3つのゲート位置から同時に金型に入る特別なランナーシステムを設計しました。最適化されたゲートシステムのメルトフロントのシミュレーション結果を図4に示します。

図3　最適化されたゲートシステム（コールドランナー）

図4　最適化されたゲートシステム（コールドランナー）およびメルトフロントの結果

図5に3つのバルブゲートの充填パターンを示します。（材料データ：PP- SABIC PP PHC26（MFI = 8g / 10min））。図6にコールドランナーシステムの充填パターンを示します。この設計では、3つのゲートが直接3ゲートシステムと非常によく似た動作をすることが認められています（材料データ：PP – TAIRIPROK4535（MFI = 35g / 10min））。その結果、ゲート位置の近くにリブを追加することにより、製品に小さな設計変更を行いました。このリブにより製品の充填が速くなりました。

図5　メルトフロントのショートショットイメージ図（バルブゲート）

図6　メルトフロントのショートショットイメージ図（コールドランナー）

結論

Moldex3Dの予測により、STANLEYチームは、費用のかかるツールの調整や作り直しを行うことなく、最適なゲートシステムを得ることで充填の問題を解決し、反りを最小限に抑えることができました。また、プロジェクトをスケジュールどおりに終え、顧客のニーズを満たすことができました。