- 国: USA
- 分野: Optics
- ソリューション: Moldex3D Advanced / Moldex3D Optics
概要
過去60年間、プログレシブアディションレンズ (PAL) は、老眼をサポートするために広く使われてきました。このレンズの一般的な製法は、キャスティング(鋳物)です。しかしこの従来の方法では、生産速度に限界があるため、どうしても製造コストが高くなります。よってこの研究の目的は、超-精密ダイアモンド旋削と微細射出成形を組み合わせることにより、いかにコストの安いプログレシブアディションレンズ (PAL) を製造するかということでした。
課題
- 製品反り変形と不均一な屈折率分布により、光がレンズを通過して目に入る時に光伝搬が変化してしまう。
- ハイブリッドグラスポリマーPAL上のプラスチックコーティングで未充填穴が発生してしまう。またパートインサートの隙間に高い残留応力が発生してしまう。
ソリューション
精密工学研究所(PERL-OSU)は以下の目的でMoldex3D のシミュレーション技術を導入しました:
- 射出成形工程パラメータを最適化することで、品質を向上し、光学収差を補う。
- 製品設計の最適化とプラスチックキャスティングの成形条件(パラメータ)の最適化
Moldex3D Opticsを利用し、保持圧力を検証することで変形問題を解決
ケーススタディ
以上の課題を解決するために精密工学研究所(PERL-OSU)は、Moldex3D のOptics モジュールを利用して射出成形されたPALの光学収差を決定する手法を開発しました。この手法は有限要素法を用いて、不均一な屈折率分布と表面変形がある状態で、波面パターンを再構築する必要があります。数値モデリングに加えてモデリング結果を検証するため、Shack-Hartmann 波面センサーを使用しました。さらにポリマーメルトの流動パターンをMoldex3D で予測し、ハイブリッドグラス-ポリマーPALに、薄い膜をコーティングしました。
このPALは、適切な成形条件を用いた微細射出成形で製造されました。PALの光学性能を評価するために、Shack-Hartmann波面センサーシステムが設置され、測定データを接合してレンズ全体の光学表面をマップしました。光学装置による測定だけでなく、レンズの光学性能の数値モデリングも実施しました。
Moldex3D Opticsモジュールによる屈折率変化と形状変形の解析結果を出力し、射出成形されたPALの光学収差を波面光学定理に基づいて算出しました。設計/シミュレーション/実験プロットの光学収差が比較され、分析されました。数値シミュレーションと実験プロットは完全に一致するため、シミュレーションを利用してPALの光学収差を正確に予測できます。さらにポリマーメルトの流動パターンも Moldex3D で正確に予測でき、ハイブリッドグラス-ポリマーPAL の薄いプラスチックコーティングを可視化することも可能です。
シミュレーション結果 (B)は波面センサー測定値と完全に一致しています
シミュレーションは正確に未充填穴を予測しました
Moldex3Dによって得られたシミュレーション解析結果を使って、光学設定が見直されました。
未充填穴を回避するため、ポリマーレンズの厚みを0.126 mmから0.726 mmへ変更しました。
結果
この研究によりPAL製造に、超-精密ダイアモンド旋削と微細射出成形を組み合わせるという新たなアプローチが提案されました。このアプローチは低コストであるため、今後産業化される可能性が大いにあります。 またこの研究は、Moldex3D シミュレーション解析が製品形状の収縮やメルトフロントパターンの理解に非常に有効であることを証明しました。さらに射出成形PALの製品設計や成形条件パラメータの最適化に、Moldex3Dが非常に有効であることを示しています。
この研究プロジェクトの最大の価値は、シミュレーションにより製造コスト削減と光学精度が同時に実現することが証明されたことです – Likai Li氏(オハイオ州立大学研究員) |