- 顧客名:北京化工大学
- 国名:中国
- 業種:教育
- 導入ソリューション:Moldex3D Advanced
概要
ポリマー複合材を用いた貯蔵タンクは、非毒性、耐久性、耐衝撃性、耐腐食性、長寿命、溶接シームレス、漏れ抵抗性、および衛生基準適合など、多くの特長を備えています。そのため、その用途は多岐にわたります。本事例では、貯蔵タンク本体とヘッドで構成されるポリマー複合材料貯蔵タンクを取り上げます。製品の品質と性能を決定づけるヘッドのねじ孔構造の成形精度は、ゲート設計に大きく左右されます。Moldex3Dを使用したゲート設計の最適化により、製品の品質要件を満たした事例を紹介します。
課題
- 組立と漏れ防止の要件の厳しさから、求められる寸法精度が非常に高い
- スクラップ率が90%を超過している
導入ソリューション
Moldex3Dを用いて各種ゲート設計を評価し、反り変形の問題を改善して金型修正のコストを低減
メリット
- 部品設計、ランナーシステム、工程パラメーターの最適化:Moldex3Dの測定ノード機能により必要な情報を効率的に取得
- 部品の収縮・反りの問題を改善
- 設計要件を満足し、寸法精度を向上
- スクラップ率を90%から5%に改善
ケーススタディ
本事例の貯蔵タンクヘッド製品(Fig.1)は2.5インチNPSMネジを用いており、解析を利用して寸法誤差を規定の範囲内に収めることが目的です。さらに、長期的に運用可能かつ現実的な手順の確立も目的のひとつです。
Fig.1 本事例の貯蔵タンクヘッドの形状
貯蔵タンクヘッドのジオメトリは非常に複雑であり、かつ高い精度が要求されます。Moldex3Dが提供する完全3Dのメッシュ構築機能とソルバー機能により、ユーザーはモデルを簡素化することなくメッシュの作成ができ、直接、CAEソフトによる解析を実行できます。また、ソフトウェアでの測定ノードも実用的な機能の1つで、反り変形解析結果からのネジの各部位における変形データの抽出に対応しています。
本事例では、オリジナル設計に加えて5項目の設計変更を実施しました。設計変更の対象は主にゲートの数、タイプ、位置です。測定ノードはすでにメッシュモデルに配置されており(Fig.2)、解析結果から反りとサイズの変形状況を観察できます。解析の最終結果(Fig.3)から、6個のゲートを用いる設計において、全体の収縮分布が最も均一となっていることが示されました。この結果から、ゲート数が多いほど収縮も均等となり、製品の真円度もより改善すると考えられます。
Fig.2 測定ノードを含むメッシュモデル
オリジナル設計(エッジゲートx 4) | 設計変更1(ピンゲートx 4) | 設計変更2(トンネルゲートx 4) |
設計変更3(エッジゲートx 6) | 設計変更4(ピンゲートx 6) | 設計変更5(トンネルゲートx 6) |
Fig.3 各ゲート設計における製品の反り変形結果
Moldex3Dは、複数の製品設計の品質を簡単に比較・評価できる豊富なシミュレーションツールを提供します。解析結果(Fig.4)によると、6個のゲート設計は、変形量が4個のゲートより低くなっています。ゲートのタイプの比較においては、ほかの2つのゲートタイプと比べて、トンネルゲートの変形量が最小となりました。このため、6個のゲートとトンネルゲートの組み合わせがすべての設計変更案の中で最良の設計であることがわかりました。また、製品の構造設計変更後(Fig.5)は、変形解析結果(Fig.6)が示す製品の収縮が最も均一であり、すべての要件を満たしています。
Fig. 4 各ゲート設計における節点変位結果
Fig.5 製品の構造改善:下側の厚みを、初期設計(左)から1 mm削減(右)
Fig.6 変位量の比較:初期設計(右)と設計変更後のジオメトリ
結論
本事例において、Moldex3Dは、高コストな金型変更を行うことなく、部品設計と金型設計を検証し最適化することに大きく貢献しました。このような解析は製造過程を柔軟なものにするだけでなく、コスト削減も達成できます。最終的に、スクラップ率を90%から5%まで大幅に低減しました。Moldex3Dの活用は、資源の浪費を効果的に削減し、企業に大きな利益をもたらすこととなります。