- 顧客名: 財団法人金属工業発展研究センター
- 地域: 台湾
- 業種: 調査研究・教育
- 導入ソリューション: Moldex3D Advanced / Optics module
概要
Moldex3D Optics module(光学解析モジュール)は光学分野で広く利用されており、製品の品質向上と生産コスト削減に役立てられています。MIRDCは、Moldex3Dの実験計画法(DOE)と光学解析モジュールを用いて、レーザー式プロジェクター内のレンズアレイの複屈折現象と成形パラメーター間の相互関係を確認することで、残留応力と反りの問題を改善しました。 また、Moldex3Dの解析結果が実際に試作した製品とよく一致したことから、量産前に成形パラメーターの最適化が速やかに行え時間とコストの削減につながりました。
課題
- 複屈折現象の低減
- 反り変形の改善
- 光束の均一性の改善
ソリューション
Moldex3Dの光学解析モジュールと実験計画法(DOE)を用いて工程パラメーターを最適化し、光の複屈折現象の低減と反り変形ならびに光の屈折の均一性の改善を図る。
結果
- 射出速度と保圧圧力が製品の品質に強く影響することを確認できた。
- 複屈折現象が52.3%改善した。
- 総変位量が5.7×10-2mmから1.7×10-2mmに低減した。
ケーススタディ
光学レンズは光を通しやすい性質をもたせなくてはならないため、射出成形では非結晶材料がよく使用されます。 射出成形過程のプラスチック材料は、温度と圧力の急激な変化による影響を受けるため、製品に生じる収縮の制御は容易ではありません。 また、部品に強い圧力が加わるとプラスチック材料は脆性破壊を起こしやすく、温度が高すぎる場合には熱劣化の恐れもあります。したがって、成形条件の最適化は高品質な光学製品の製造に欠かせません。
本事例では、レーザープロジェクターのレンズアレイを取り上げます。 本事例の目標は、残留応力を最小限に抑える解析を通して複屈折現象と反り変形を低減し、光屈折の均一性を向上する最適なパラメーターを導くことです。
Fig. 1 本事例で取り上げるレーザープロジェクターのレンズアレイ
MIRDCは、Moldex3D光学モジュールを用いてオリジナルデザインと、金型温度、射出速度、保圧圧力、保圧時間等が異なる複数のデザインで解析しました。 DOE手法を用いたMoldex3D解析の結果から、射出速度の上昇にて複屈折現象が低減することと、髙い保圧圧力により反り変形が低減することを確認しました。 そのため、最初の変更デザインからさらに射出速度と保圧圧力を引き上げて2つめのデザインとしました。 ただし、射出速度と保圧圧力を同時に引き上げた場合には、残留応力の上昇とゲート付近の光屈折均一性に影響が出るというデメリットも確認されました。 オリジナルデザインと変更デザインの総変位量の差が1 μm.未満であったことからMIRDCは保圧圧力の引き上げを取りやめ、総合的な判断のもとで工程パラメーターを決定して最適な製品デザインを導きました。
MIRDCはMoldex3Dを用いてオリジナルデザインと、射出速度を引き上げた変更デザインの解析を行いました。各解析結果の比較(Fig. 2)が示すように、射出速度の引き上げにより残留応力の影響が弱まるため、光の屈折は小さくなり、変更デザインの解析結果は実験結果(右図)とよく一致していました。
オリジナルデザイン 変更デザイン 変更デザインの実験結果
Fig. 2 射出速度の引き上げにより光の屈折度に明らかな改善が見られます。変更デザインの妥当性は実験により検証しました。なお、図中の色相の相違は、明視野法と暗視野法の違いによるものです
結論
Moldex3Dの解析結果から、製造プロセスの設定が製品品質に影響することと、潜在的な欠陥の予測が可能なことが理解できました。 さらに、光学テーブルの実験データを用いた検証により、解析結果の妥当性が証明されました。(Fig. 3) これにより、成形パラメーターの最適化だけでなく、試作金型の製作回数と工数の削減が可能となりました。 将来的には、Moldex3Dを射出圧縮成形工程やマルチキャビティ工程にも適用することで、残留応力やフローバランス、反り変形の関連性調査にも活用していくことが可能です。