ドレープ成形と射出成形を組み合わせた成形は連続繊維強化熱可塑材料(Continuous Fiber Reinforced Thermoplastics/CFRT)を加工する為に用いられる成形法のひとつであり、大型製品の製造に利用されています。この工法では、まず繊維をエポキシ樹脂に浸し、ドレープ成形によって板形状の材料から製品の初期形状を作ります。その後、射出成形によりキャビティ内に充填することで製品が完成します。ドレープ成形プロセスでは、連続繊維は製品形状に従って変化し、繊維配向は製品の機械特性に影響を与えます。このような要因を考慮して射出成形解析を行うために、Moldex3D Multi-component Molding(MCM)モジュールでは、ドレープ解析における直交異方性材料の材料特性をLS-DYNAから取り入れ、製造プロセスの最適化に役立てています。
以下に、LS-DYNAを利用して製品の初期形状のドレープ解析を行い、続いてMoldex3Dによる射出成形解析を行う場合の例をご紹介します。
Step 1: LS-PrePostでプリプロセス(入力データの作成)を行います: LS-PrePost 4.0 (LSPP)を起動し、薄型シェルメッシュモデル(「IGS file」)をインポートし、続いてAuto Mesherを使用してメッシュを生成します(推奨バージョン:LSPP 4.0以降)。
Step 2:LS-PrePostのApplication > Metal Forming > general Setupから、ドレープ解析に用いる物性(繊維モデル:*MAT_234と*MAT_235)とキーワードを設定します。
このとき、次のようにパラメーターを設定します:INN=2、NEIPS=20。
Step 3:LS-DYNA Managerを起動してSolver > Start > LS-Dyna Analysisと進み、dynファイルを読み込んで解析を実行します。解析終了後、LS-PrePostに戻ってポストプロセスを行います:Binary Plot Fileからd3plotファイルを開き、ドレープ解析の結果を確認します。
Step 4:LSファイルには繊維材料の配向と板厚のデータが保存されています。LSファイルのエクスポート方法:ToolsフォルダからEXEファイルを開き、LSファイルのファイル名、rootパス、ブランクの情報を入力します。指定したフォルダ内にBATファイルとLSファイルが生成されます。
Step 5:LS-PrePostで、LS-DYNAのドレープ解析結果が保存されたd3plotファイルを読み込みます。BATファイルを使用してLSファイルに保存された繊維材料の配向データを起動します。Note:LS-DYNAの解析から得られる連続繊維の角度はMoldex3D MCMプロジェクトに投影され、Moldex3D MCMはLSファイルと繊維角度を用いて繊維材料の配向を決定します。
Step 6:Moldex3Dから、パートとパートのインサート情報を含む3D-SolidメッシュモデルでInjection Moldingプロジェクトを作成します。インサート部品に直交異方性繊維材料を指定するには、Computation ParameterのMCMタブに移動します。Orthotropic Material Properties(直交異方性材料特性)のSettings(設定)をクリックします。ワークスペースが起動したら、直交異方性材料の指定または変更を行います。直交異方性材料を指定すると、User-defined properties(ユーザー定義特性)にチェックが入ります。
Note:3D-Solidインサート部品のメッシュは、LS-DYNAのシェル要素モデルやMFEに対応するプリプロセッサを使って生成します。
Step 7:下図のワークスペースでは、インサート部品の直交異方性繊維材料データの作成、指定、インポート、削除が行えます。ダイアログを展開すると、各軸方向の機械特性と熱膨張係数を変更することができます。
Step 8:Moldex3Dの解析を実行し、解析結果を確認します。