アニーリングは、プラスチック成形における重要工程です。アニーリング処理では、まず、製品を加熱し一定温度をしばらく保持します。続いて、ゆっくりと冷却します。アニーリングを行うことで、成形中に生じた残留応力を緩和することができます。また、製品材料の延性や靭性の向上、特殊なミクロ構造の生成などにもアニーリング処理が用いられます。
Moldex3D応力解析を通して、アニーリング処理中の製品の変形挙動を確認できます。また、アニーリング解析では、変位結果、Von Mises応力、せん断応力、温度分布を反り変形計算結果に基づいて計算します。(Fig. 1)
Fig. 1 アニーリング解析の結果リスト
Moldex3D R17では、アニーリング解析において、繊維配向によるジオメトリ変形への影響を考慮しています。これにより、反り変形の予測精度が向上しました。
繊維配向を考慮したアニーリング解析の設定
Step 1: Flow/Packタブ(強化ソルバーまたは標準ソルバー)およびWarpタブを開き、Run fiber orientation analysis(繊維配向解析実行)オプションが有効になっていることを確認します。
Fig. 2 FLow/Packタブ・Warpタブ:計算パラメーター設定
Step 2: デフォルトのMicro-mechanics modelはMori-Tanakaモデルです。必要に応じて他のモデルに変更できます。アニーリング解析のマイクロ構造モデルはWarpタブの設定に従います。また、モデルタイプはLogファイルで確認できます。
Fig. 3 Moldex3Dで利用できる3種類のマイクロ構造モデル
Step 3: Stressタブを開き、Analysis typeにAnnealingを指定します。続いて、標準解析シーケンス(CFPCW)完了後にStress-S解析を実行します。
Fig. 4 アニーリング設定と応力解析の実行
注意:Logファイル(*.lgs)は再確認が可能です。このファイルには、反り変形解析(*.lgw)と同期された設定が保存されています。
Fig. 5 応力Logファイル内のアニーリング関連データ
ケーススタディ
ピンゲートとサイドゲートを1つずつ持つプレートについて、繊維配向による影響を考慮した解析と、ランダム配向として繊維配向による影響を考慮しなかった解析の結果を比較します。アニーリング解析終了時(EOA/End of Annealing)には、Table 1に示すようなZ方向の変位結果を得ることができます。ピンゲートとサイドゲートどちらにおいても、繊維配向を考慮した場合とランダム配向を考慮した場合では、最終的な変形結果が異なります。
Table 1 2種類のゲートタイプを持つプレートの解析結果比較:
繊維配向の影響を考慮した場合とランダム配向とした場合
Fig. 6は、赤い矢印の方向・位置に従う計測点により検出されたカーブです。この結果から、アニーリング工程において繊維配向の影響を考慮することで、最終的な変形量に差が表れることが確認できます。