従来の簡略化された圧縮成形シミュレーションでは、ユーザーが迅速にモデリングできるよう、開閉時の冷却水路位置の変化を単純化していました。しかし、この仮定により冷却効果に誤差が生じ、解析の精度に影響を与える可能性があります。そのため、冷却水路が金型の動きに伴って移動する挙動をシミュレーションに取り入れることで、より実際の状況に近い解析が可能となり、金型内部の温度予測の精度を向上させることができます。以下では、Moldex3Dの圧縮成形シミュレーションに金型移動を組み込む方法とその影響について説明します。
操作手順
制限事項
- 圧縮成形プロセスのみ対応。
- 可動側および固定側の金型プレートが必要(プレートは簡略化が必要)。
- インサート部品や金型インサートの移動には対応していません。
- 成形品、冷却水路、圧縮ゾーン、固定側および可動側金型プレート間のメッシュは一致している必要があります。
- 標準冷却解析のみ対応。
- Moldex3D Studio 2024R1バージョンでは、冷却時間を最小値(推奨値 0.001秒)に設定する必要があります。
ステップ 1:モデルの準備
Moldex3D Studio を開き、圧縮成形を選択します。開いた状態の金型において、成形品、冷却水路、金型プレート、および圧縮ゾーンを含む一致メッシュを作成またはインポートします。
ステップ 2:解析設定
ホームタブのプロセスウィザードを開きます。
新しい圧縮成形プロセス(プレートタイプ)では、圧縮時間に冷却時間が含まれるため、冷却設定タブで冷却時間を0.001秒に設定してください。
圧縮成形シミュレーションのその他の解析設定を完了した後、解析シーケンスで Transient Analysis-Ct F/P Ct W を選択し、解析を実行します。
ステップ 3:結果の表示
Moldex3Dでは、圧縮成形プロセス中の金型の圧縮移動をシミュレーションすることができます。
金型移動と冷却水路の移動を考慮した解析を行うことで、より正確な金型内の温度予測が可能になります。
新しい圧縮モデリングでは、圧縮完了時の冷却水路の位置がより適切に考慮され、成形品により近づいているため、圧縮面の温度が低く抑えられます。一方、簡略化された圧縮モデリングでは、金型移動に伴う冷却水路の位置変化が考慮されていないため、冷却効果が十分に発揮されません。
金型温度分布を断面で確認 すると、従来の圧縮成形プロセスでは、可動側の冷却水路が成形品から遠く、圧縮ゾーンの空間は金型ベースとして仮定されており、実際の状況とは完全には一致していません。一方、新しい圧縮成形プロセスでは、圧縮完了時に冷却水路が金型の移動とともに閉じた状態の位置へと移動するため、冷却水路が正常に機能し、実際の状況により近い解析が可能となります。