CoreTech System研究開発部プロジェクトマネージャー 曽煥錩(博士)
繊維強化熱可塑性複合材料(FRT)は、自動車産業および航空宇宙産業において、車両の軽量化および燃費の改善を目的に広く用いられています。FRTの処理方法には、高速で高度に自動化された圧縮成形および射出成形の技術が含まれ、繊維および樹脂をキャビティに充填しています。繊維強化プラスチックの異方性流動挙動は、主に繊維配向の状態に依存します。実務上の圧縮成形のガラスマット強化熱可塑性プラスチック(GMTs)について言えば、繊維配向がもたらす異方性流動により、円盤状の製品が押し出されて楕円状に変形します(図1)[1]。一般的な状況において、ニート樹脂の射出成形中のメルトフロントは平滑であり、かつ形状を維持しながら延伸します(図2)[2]。長繊維または短繊維の材料で、繊維濃度が高い場合、特定かつ不規則な流動パターンが生じ、自由表面がキャビティ壁面に沿って高速で進んでいくことが知られています。
図1 円盤が単方向に押し出されて楕円状に変形 [1].
図2 ニート樹脂(A)およびFRT(B)の流動挙動模式図 [2].
CoreTech System社(Moldex3D)と米国パデュー大学の共同研究において、パデュー大学複合材料製造・シミュレーションセンター(CMSC)のファバロロ博士およびパイプス教授がIISO(informed-isotropic)粘性理論を提起し、CoreTech System社(Moldex3D)は、本理論をシミュレーションソフトウェアに応用しました。Moldex3Dによる射出成形および圧縮成形の異方性流動シミュレーションは、とても重要です。先日、Moldex3DのIISOモデルは、米国特許を取得したほか[3][4]、学術誌にも発表しました[5][6]。
Moldex3Dのシミュレーションにおいて、圧縮成形工程内の初期の繊維配向分布がX軸単方向であり(図3)、ポリプロピレン(200°C)に25wt%のガラス長繊維(アスペクト比L/D=360)を加えた素材について、最終的なメルトフロントは、元の円盤状から明らかな楕円状に変形しました(図4)。このほか、シミュレーション結果から、50wt%ガラス短繊維(アスペクト比L/D=20)を加えたポリアミド66についても、メルトフロントは、自由表面が側壁に沿って高速度で進んでいくことが示されました(図5)。
図3 Moldex3Dの圧縮成形シミュレーション
図4 単方向チャージのX軸の最終メルトフロント [5].
図5 射出成形における異方性メルトフロントのシミュレーション結果 [6].
現時点において、最先端のCFDソフトウェアを用いて繊維配向がもたらす異方性流動挙動をシミュレーションすることは、依然として大きな挑戦的課題です。そのため、IISO粘性理論は、異方性流動の把握において、非常に重要な技術となります。Moldex3Dの現行バージョンの繊維カップリング解析技術は、射出成形および圧縮成形の産業において広く用いることができ、繊維複合材料の製造予測に役立てることができます。
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