新型フラットファイバーをフィラーとしたシミュレーションが可能に

繊維強化熱塑性複合材料は自動車産業において製品の機械的特性の向上とそり変形の抑制に広く使用されています。従来の繊維は一般的に円形形状の断面を持つ棒状となっています。近年、日本の東京に本社をおくグラスファイバーメーカー、日東紡績(NITTOBO)によってフラットファイバー技術が開発されました[1]。これは長円形の断面形状を持つフラットファイバーで、扁平率(FR)は長さを幅で割って求めます(図1)。

図1 通常繊維とフラットファイバー

断面形状が円形の繊維を通常繊維と言い、公開された特許とレポート[1]によると、フラットファイバーフィラー(幅7 µm、長さ28 µm,FR = 4)の熱可塑性材料で成形された平板では、通常繊維を添加した材料と比較してそり変形がごくわずかとなり[2]、そり変形が80%改善しています。

しかしながら、現在のところフラットファイバー複合材料の学術研究は非常に少なく、既存の先端技術をもってしてもフラットファイバーフィラーの成形プロセスをシミュレーションできないことが、非常に大きな課題となっています。そのため、フラットファイバー複合強化製品のメリットを予測する方法を特定することが現在の最重要課題となっています。最新バージョンのMoldex3Dでは先進的なフラットファイバー射出成形のシミュレーションを行うことができ、設計者や解析技術者は機械的特性と寸法安定性の改善状況を確認することができます。以下の事例では円形繊維とフラットファイバーを含む複合材料を観察しています。ガラスファイバー/PPの含有率は、円形繊維とフラットファイバーのいずれも50wt%で、円形繊維の長さLFは0.3 mm、繊維直径は15 、アスペクト比は20、フラットファイバーの長さLFは0.5 mm、扁平率はFR=4,長さLmin = 7 、幅 Lmax= 28µm となっています。

図2のシミュレーション結果から、フラットファイバーでは円形繊維と比較してそり変形が大幅に改善していることが確認できます。また、図3からもフラットファイバーは円形繊維に比べ、X軸流動に沿ったY軸方向(厚さ方向)への変位が60%減少していることが確認できます。このことから、Moldex3Dソフトウェアはフラットファイバーの寸法安定性が円形繊維よりも優れていることが確認され、フラットファイバーを添加した熱可塑性材料は今後さらに幅広く応用されることが予想されます[3]。

図2 円形繊維(上図)とフラットファイバー(下図)のそり変形シミュレーション結果の比較

図3 円形繊維とフラットファイバーのY方向変位の比較

Reference Source:

[1] Nitto Boseki (NITTOBO) Co., Ltd. in Japan https://www.nittobo.co.jp/business/glassfiber/frtp/hisff.htm

[2] Flat glass fiber developed for reinforcement of thermoplastic resins https://www.plasticstoday.com/materials/flat-glass-fiber-developed-reinforcement-thermoplastic-resins/96856545057602

[3] Novel ‘Flat’ Fiberglass Enhances Injection Molded TP Composites https://www.ptonline.com/articles/novel-flat-fiberglass-enhances-injection-molded-tp-composites

曾煥錩Iver
曽煥錩 博士
コアテックシステム(Moldex3D)
研究開発部 プロジェクトマネージャー
台湾交通大学応用化学科博士。主な研究分野:ポリマーレオロジー、ポリマー複合材料加工、分子シミュレーション。新しい繊維配向モデルの研究成果はアメリカで特許を取得し、国際的なポリマーレオロジー雑誌であるJournal of Rheology® 2016に掲載されています。

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