射出成形工程の中で、金型とそのパーツは外部から複数の荷重がかかります。そのなかでも、温度と圧力の2つは金型に大きな影響を与えるものであるといえるでしょう。長期にわたって繰り返し金型を使用する射出成形では、この2つは金型の変形に大きく影響します。金型の変形はキャビティ寸法の変化や最終的な成形パーツの形状に深く関わるため、大きな問題となっています。そのため、高精度な製品製造の最適化にあたっては、金型設計段階での金型変形解析による予測が重要になっています。
Moldex3Dの最新バージョンR13.0では、金型の変形とその影響を解析する機能が実装されました。独自の工程条件の入力後、ユーザー定義の境界条件を計算パラメーターに入力して解析を実行すると、金型の変形と応力集中に特化した結果が得られます。金型変形解析を通じて金型に生じる可能性のある問題を検出します。検出された問題点を基に、必要とされる変更を加え、金型の製作前に将来的な問題の解決に取り組むことが可能です。 ユーザーは、この解析で得られた有用な情報を利用し工程パラメーターや形状モデルそして、金型材料の調整を行うことで金型設計の最適化ができます。このようにして、金型の構造強度を高めることにより金型の耐久性を向上させるだけでなく、結果としてその金型から作られる製品の形状の精度も向上させることが可能です。
以下は、Moldex3D R13.0による金型変形解析の例です。
1. 金型変形解析は、充填・冷却解析の実行後に行います。充填ステージの圧力荷重と冷却ステージの金
型熱荷重による金型変形の挙動を解析し、可視化することで、金型の問題点を明らかにします。
充填完了時の圧力分布
冷却完了時の温度分布
2. 計算パラメーターのMold Deformationタブにユーザー定義の境界条件を入力します
Designerのインターフェースから金型の変位拘束を設定できます。
3. 金型変形解析を実行します。
4. 金型変形解析の結果を取得:
- 金型変位フィールド
- 金型の応力集中フィールド
金型全体の変位フィールド1
金型全体の変位フィールド2
ミーゼス応力フィールド1
ミーゼス応力フィールド2
上記のケースでは、金型全体変位フィールドが0 mm ~ 0.004 mm であり、応力分布は0 ~ 最大2781 MPaであることがわかっています。
金型変形解析で最も変位量が大きいとされた箇所は最終的な金型パーツの中で最も変形の激しい箇所であると想定されます。また、応力分布解析で応力の集中がみられた箇所は、金型を繰り返し使用した場合に瑕疵や損傷が現れる可能性が高いと考えられます。同時に、金型変形のデータを取得した後に、ユーザーは、形状を調整し、適切な金型材料を選択して金型の設計と構造強度を最適化することができます。その結果、金型変形解析によって金型の設計の最適化に有用な参考データが得られます。
適切かつ機能性のある金型をつくることは、製品の最終形状の精度を向上できるだけでなく、金型の寿命も長くすることが可能になるということです。