最新!Moldex3Dの繊維配向予測により長繊維複合材料の長所を引き出す

Ref. Tseng H-C, Chang R-Y, Hsu C-H. Numerical predictions of fiber orientation and mechanical properties for injection-molded long-carbon-fiber thermoplastic composites. Polymer Composites 2017, First Published, https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/pc.24403/abstract
                                                                                                                                                                                     曾煥錩

長繊維強化熱可塑性樹脂複合材料(LCFRT)は、製品の安全性と耐久性の両方のニーズを満たすことができ、炭素繊維の機械的性質もまた天然繊維に比べて強靭であることから、しばしば軽量化された自動車材料に使用されています。実際のところ、射出成形による繊維製品には、シェル層、コア層等の典型的な積層構造が見られます。長繊維の異方的繊維配向は、製品の機械的性質に影響を及ぼします。しかし、長繊維及び繊維濃度の高い製品を処理する場合、異方的繊維配向をいかに予測するかが大きな課題となります。現在のところ、シミュレーションを行って各種繊維複合材料の繊維配向の変化を検討した事例はあまり見られません。

本事例は、ポリプロピレン(PP)とポリアミド66(PA66)の高分子重合体の組み合わせについて検討を行っています。使用する原料は、50wt% LCF/PP及び50% LCF/PA66を含む、長繊維強化熱可塑性樹脂複合材料です。図1は、米国パシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)が設計したエッジゲート充填のPNNL板状製品であり、そのサイズは、178 mm x 178 mm x 3.175 mmです。これまでの手法とは異なり、樹脂射出CAEソフトウェアMoldex3Dによる新たな繊維配向理論モデル―iARD-RPRモデル―は、3つのパラメータのみで射出成形プロセスにおける繊維配向を正確に予測することができます。図2は、当該製品の中央部分(B部分、パネルの中央)の厚み方向の繊維配向分布であり、シミュレーション予測と実験結果の示すデータが大きく一致していることが見て取れます。

図1 本事例のPNNLパネルの形状及び3つの測定箇所
図2 異なる基材合成樹脂PA66とPPの同一炭素繊維濃度50wt%における繊維配向分布の差異の比較(点は実験データ、線は予測値)。

複合材料の性質解析シミュレーションソフトウェア「Digimat-MF (MSC Software及びe-Xstream engineering)」は、マイクロ・メカニックスモデルの森・田中理論を利用して繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の機械的性質を計算しています。予測した繊維配向情報によると、当社は、Digimat-MFを利用してフロー方向のヤング率E1を得ました。図3は、標準化製品の厚さのヤング率の分布であり、その比較により、50wt% LCF/PA66 > 50wt% LCF/PPであることがわかりました。平均厚さ係数E1の値と実験結果は表1に示す通りです。概して、予測したE1の結果の正確性は、妥当なものであると言えます。さらに同一繊維濃度の50wt% LCFsを加えた後、PA66の強化効果は、PPよりも大きいことが判明しました(図4)。

図3 異なる基材合成樹脂PA66とPPの同一炭素繊維濃度50wt%におけるフロー方向のヤング率の分布の差異の比較。
aTaken from Web Page of PlastiComp Technical Data Sheet.
表1 平均配向及び平均係数の予測と実験データの比較
図4 異なる繊維複合材料の係数予測に関する純PP、純PA66の実験データとの比較

全体的に見て、現在の自動車用の長繊維強化熱可塑性樹脂複合材料の繊維配向は、Moldex3Dの繊維配向予測結果とDigimat-MFの統合を通じて正確に予測でき、その構造強度も確保できます。高品質かつ複雑な形状の樹脂製品を設計する場合、フロー方向の変化、リブ設計の有無、並びに厚さ及び穴の変化等に影響を及ぼします。そのため、いかにして最適なパラメータの組み合わせを決定し、最適な繊維配向を得るかが今後の研究における大きなカギとなります。

曾煥錩Iver
曾煥錩 (Ivor Tseng) 博士
研究発表部 プロジェクトマネージャー
コアテックシステム株式会社 (Moldex3D)
台湾交通大学応用化学科博士。
主な研究分野はポリマーレオロジー、高分子複合材料加工及び分子シミュレーション。
斬新な繊維配向モデル研究結果は米国の特許申請に認可され、国際有数の高分子レオロジージャーナル
Journal of Rheology® 2016 に発表しました。

TAGS: 

Test drive Moldex3D

Join the thousands of companies using Moldex3D

Talk to Sales

Schedule a product demo with our sales team