プラスチック製品は益々小型化し、軽量化されています。 そのような傾向の中でプラスチック製品を設計するために重要なことは、外的美観と構造的完全性のバランスを保つことです。リブ（溝）は製品の機械特性の強化のためによく使用されます。しかし製品表面とリブの交差部分では、厚みの変化があるために、不均一な収縮が発生し、ヒケのような表面欠陥が生じることがあります。製品形状だけでなく、ヒケの発生も保圧条件に密接に関係しています。CAE 技術が利用される以前は、ヒケを軽減するためにトライアンドエラーと技術者達の経験を元に成形条件を最適化してきました。

しかし製品設計の複雑化と今日の製造業界の激しい競争の中、トライアンドエラーや技術者達の経験に頼る従来の方法での製品開発では、顧客の要望に十分に応えられなくなりました。このヒケの欠陥の問題を解決するため、また成形試作にかかるコストを減らすために、Moldex3D は優れたシミュレーション機能であるSink Mark Displacement解析を提案します。Moldex3DのSink Mark Displacement 解析は、製品形状と使用材料を元に、保圧時のヒケ挙動を解析します。これは製品表面のヒケの変位値を高精度に算出します。これを利用すれば、実際に製品を成形する前に、射出成形品のヒケ現象を正確に捉え、製品の最適化とパラメータの調整が可能になります。

以下は実際にMoldex3DのSink Mark Displacement解析を使用して、ヒケを予想したケースです。Fig. 1のように製品形状には平坦な表面があり、厚みが異なる４つのリブがあります。それぞれのリブの厚みは 1.8mm, 1.5mm, 1.2mm, 0.9mmです。

Fig. 1 製品形状には平坦な表面があり、厚みが異なる４つのリブがあります

保圧時の体積収縮の解析（Fig. 2）では、 平坦な表面では均一な体積収縮分布が見られます。しかし製品表面とリブの交差部分では、体積収縮値は不均一になります。このようにリブの厚みが大きければ、収縮値も大きくなることが分かります。このように収縮が大きい部分には、ヒケが発生する可能性が高くなります。

Fig. 2 Moldex3Dの解析: Packing _Volumetric Shrinkage

Fig. 3はMoldex3DのSink Mark Displacement 解析と、実際の成形品のヒケの観察との比較です。実験結果から、リブの厚みが大きくなれば、ヒケがより深くなることが分かります。

Fig. 3 (a)Moldex3Dの解析: Sink Mark Displacement; (b) 実際の成形品のヒケの観察
(Ref: SIMULATON AND VERIFICATION ON PART SURFACE QUALITY USING EXTERNAL GAS-ASSISTED INJECTION MOLDING PROCESS, S. -C. Chen et al.)

複雑な形状を持つ製品のヒケ現象を正確に予測するために、Moldex3D はSink Mark Displacement 解析のシミュレーション機能を改良してきました。以下のケース(Fig.4)をご覧ください。リブに角度がある製品の場合、Moldex3Dの体積収縮解析では、不均一な収縮が発生することを示しています。従って、ここでは製品表面にヒケが非常に発生しやすいといえます。

Fig. 4 (a)角度をつけたリブ (b)Moldex3Dの解析: Packing_Volumetric Shrinkage

Fig. 5 はMoldex3D のSink Mark Displacement 解析の以前のバージョンと最新バージョンとの比較です。ヒケ予測解析のためのソフトウェア機能が、飛躍的に向上したことがわかります。Moldex3Dの最新バージョンはリブ部分での不均一な収縮によるヒケ現象を高精度にシミュレーションできます。

Fig. 5 Moldex3DのSink Mark Displacement解析比較 (a)以前のバージョン (b) 最新バージョン

このSink Mark Displacement 解析の機能強化のように、Moldex3Dはソフトウェア機能とシミュレーション精度を常に向上し続けてきました。 改良されたソフトウェア予測機能は、プラスチック製品の設計に携わるユーザー、特に複雑な形状を持つ製品を扱うユーザーにとって非常に有益です。また潜在的な欠陥が発生する部分を可視化することで、即座に修正を行うことができるため、試作にかかるコストを削減し、製品を市場に投入するまでの期間を短縮することが可能になります。