クラウドリソースを利用したMoldex3Dの演算

コアテックシステム製品チーム技術マネージャー・林智仁

現在の産業実務上のチャレンジ

フル3次元樹脂流動解析結果の精度向上および解析結果が得られるまでの時間の短縮が求められ続けており、演算能力に対する追求はとどまるところを知りません。しかしながら、自身でコンピューティングクラスター(cluster)を構築するためには定期的なハードウェアアップデートおよびハードウェア・ソフトウェアの据付け・インストール・メンテナンスに労働力を必要とするだけでなく、稼働率についても考慮する必要があります。また、コンピューティングクラスターの規模が小さすぎると、解析を必要とするプロジェクトが大量に集中した際に計算需要に耐えられませんが、コンピューティングクラスターの規模が大きすぎると、計算需要を多く必要としない際のコンピュータの遊休およびコストの増加が生ずるおそれがあります。さらに、人員が出張している場合において、計算資源の需要があり、会社のコンピューティングクラスターにアクセスして解析を行う必要があるときにも、コストをかけてネットワーク回線のセキュリティおよび十分な帯域幅を持つネットワークの確保を行い、プロジェクトのアップロード・ダウンロードの分析を行う必要があります。

技術的説明

クラウドコンピューティング
クラウドコンピューティングは、インターネット経由で提供されるITリソースオンデマンド(On-Demand)であり、使用量に応じて対価を支払います。購入、保有ならびに物理的なデータセンターおよびサーバーの維持を必要とせず、必要に応じて演算能力、保存、データベースなどのクラウドプロバイダの技術的サービスにアクセスできます。現在の世界3大クラウドプロバイダは、アマゾン(AWS)、マイクロソフト(Azure)およびグーグル(GCP)です。クラウド環境にコンピューティングクラスターを構築すると、計算資源をローカルからクラウドに移動させ、使用量に応じて対価を支払うだけでよく、ハードウェアの減価償却を考慮する必要がありません。また、必要がない場合にはただちにクラウドのコンピューティングクラスターを削除することもできます。

IaC(Infrastructure as Code)
クラウド環境のリソースはすべてソースコードで表示でき、コンピューティングクラスターが必要とする各種設備(ネットワークアーキテクチャ、ノードマシンのタイプおよび数量、Site-to-Site VPNなどを含む)に応じてテンプレート(template)を作成し、デプロイを行えます。同じテンプレートの内容は、デプロイの回数に関係なく、完全に同一のコンピューティングクラスターアーキテクチャを得られます。それにより、デプロイを自動化し、手作業によるデプロイの時間的コストを回避できます。

ライセンスの持ち込み(BYOL、Bring Your Own License)
クラウド環境において商用ソフトウェアを利用するにはライセンスが必要です。クラウドが提供するVPNゲートウェイとローカルのVPNゲートウェイの接続を利用してSite-to-Site VPN接続を構築し、クラウドが運用する商用ソフトウェアをローカルのライセンスサーバー(License server)に接続してライセンスを取得できます。Site-to-Site VPN接続は暗号化によって伝送内容のセキュリティを確保しています。

樹脂流動ソフトウェアまたはMoldex3Dの技術的サービスを利用して問題を解決する方法

クラウド環境におけるコンピューティングクラスターのデプロイの煩雑な手順を簡略化するため、Moldex3DではCloud-Connectを提供してユーザーが自動的にデプロイできるようにしています。デプロイが完了すると、Computing Managerを使ってジョブを送信できます。全てのフローはジョブを送信したローカルのコンピューティングクラスターとまったく違いがありません。Moldex3D Cloud-Connectを利用してデプロイしたコンピューティングクラスターは、コンピューティングノードの自動オン/オフおよびオートスケール(Auto-Scaling)に対応しています。デプロイに際してユーザーはコンピューティングノードの最大数および最小数を指定でき、送信したジョブが増え続けている場合は、Moldex3Dのジョブスケジューラ(Job Scheduler)が必要とするリソース量に応じて新しいコンピューティングノードを数量の上限に達するまで作成し続けます。他方、ジョブが減っている場合は、コンピューティングノードが数量の下限に達するまで削除され、下限数のコンピューティングノードがアイドル状態になると自動的にオフになり、コストを最小化します。

Cloud-Connectは、現在、AWS、AzureおよびGCP(2023年下半期)の3大クラウドプロバイダに対応しており、製品名はそれぞれAzure-Connect、AWS-ConnectおよびGCP-Connectです。ユーザーはAWS、AzureまたはGCPのアカウントを所持しているだけで自動デプロイを行えます。下図はAzure-Connectデプロイのクラウドコンピューティングクラスターのチャート図です。

ユーザーはローカルで同じComputing Manager画面を使用してジョブをほかのローカルまたはクラウドのコンピューティングクラスターに送信できます(下図参照)。

結論

クラウドコンピューティングは高性能の計算資源をクラウド環境に配置し、ローカルのユーザーはインターネットに接続するだけでフル3次元樹脂流動解析を行うことができ、インフラの整備、物理的空間におけるコンピューティングクラスターの構築、ハードウェアの減価償却の検討を必要としません。Moldex3D Cloud-Connectを利用すると、短期間でゼロからクラウドクラスターを構築し、作業量に応じてコンピューティングノードの数量を自動的に調整して効率の最適化を実現できます。

 


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