樹脂流動解析ソフトウエアMoldex3Dユーザー事例–第一電子工業株式会社

on 10/22/2009

量産の垂直立ち上げに貢献 -小型・薄型化の進むコネクタで高精度のシミュレーション
【樹脂流動解析ソフトウエア「Moldex3D」ユーザー事例】 第一電子工業株式会社

 

セイロジャパンが提供している樹脂流動解析ソフト「Moldex3D」(台湾CoreTech System社製)は,優れた3次元のCAEツールとして各種の射出成型を行うユーザーに評価されている。 このMoldex3Dを活用している会社の一 つが,各種コネクタを設計・製造する第一電子工業(本社:東京都江東区木場)だ。 同社では製品サイクルが短く小型化の要求が高い携帯電話機向け FPC(flexible printed circuit)用コネクタなどを中心とした各種コネクタの成形のためのシミュレーションをMoldex3Dによって行っている。 金型作成の時間・コス トを大幅に削減できるMoldex3Dは,同社にはなくてはならない解析ツールだという。

 

第一電子工業(DDK Ltd.)は日本におけるコネクタ設計・製造の草分けだ。昭和38年の設立当時ほとんどを海外製が占めていたコネクタ業界において,独自の国産製品を世に送り出してきた。プリント基板コネクタやPCカード・コネクタを中心に,光コネクタや丸形コネクタなど幅広い製品を扱っている。使用用途は携帯デジタル・オーディオ・プレーヤーや携帯電話機,デジカメなどの小型デジタル機器,パソコン,プリンタに加えて自動車,産業用ロボットや計測機器と実にさまざまだ。また同社のコネクタは,防腐性や高度の防水・防滴性が要求される宇宙航空研究開発機構(JAXA)種子島宇宙センターのロケット発射台や海洋研究開発機構の無人探査機にも採用されるなど,技術力は折り紙つきだ。

 

製品サイクルの短期化がMoldex3Dの採用を後押し

 

第一電子工業では主にMoldex3Dを多極コネクタと一部の丸型コネクタに使用している。金属の金型に樹脂を注入し,冷却後取り出す射出成型によって製造する製品は,ほとんどが流動解析の対象になる。

 

同社では製品サイクルの長い製品も販売する一方で,携帯電話機やデジカメ用のものなど半年ほどで入れ替わる製品も扱う。「このような製品サイクルの短いコ ネクタでは,開発期間の短縮と量産の垂直立ち上げができることが,何よりも重要になります」(生産技術開発第一部 部長 桑原寧氏)。

 

コネクタは樹脂部分と金属製のコンタクトからなり,かつてはコンタクトを基板穴に挿入して,基板裏面からはんだ付けを行っていた。現在はエンドユーザー製 品の小型,薄型化から表面実装(SMT :Surface Mounting Technology)が一般的で,コネクタに対してしても小型・薄型と共に,はんだリフロー工程で反りの少ない品質要求もますます高まっている。

 

実物との整合性の高さが決め手に

 

第一電子工業では2000年に3次元CADを導入したのに併せ,3次元のCAEツールについても検討をはじめた。手始めに一つのコネクタを解析依頼した が,他社のCAEソフトのシミュレーション結果は実際の成型品の形状と期待したほど一致しなかった。その中で「格段に精度の良かったのがMoldex3D でした」 (事業統括部 事業推進部 要素技術開発課 課長 井上尊勝氏)。

 

デモ版を借りて操作してみたが,他社のものとは違って説明書を熟読しなくとも扱いやすく,使いこなせる自信ができた。「使い出すと,これがなければ仕事ができなくなると感じました」(井上氏)。

 

また他社の解析ソフトの説明は,一般的なケースなどの厚さが均一な製品や車のバンパーのように大きな製品などを用いたものばかりだったのに対し,セイロジャパンは豊富なコネクタの事例も持っており,信頼できたという。コネクタは肉厚が場所によって大きく異なり難しいからだ。 「欲しいと感じた機能がすぐ追加されるなど,改良への意欲が感じられ,今後の発展が期待できるソフトだと感じました。 また技術的な相談にも丁寧に対応してくれました」(井上氏)。 製品形状だけでなく,スプルー/ランナーも含めて完全 3次元解析ができることも,Moldex3Dの特徴である。

 

さらにFPC用コネクタによく使われる樹脂,液晶ポリマ(LCP:liquid crystal polymer)でも,シミュレーションと実物との整合性が取れたことが大きな決め手になった。 LCPは高流動性を持ち寸法精度がよい上に,規制物質を含まなくて高耐熱性を持つ。このためSMT用コネクタの樹脂としてLCPが良く採用されている。 RoHSなど環境問題への対応で,融点の高いPbフリーはんだの採用が増えている中で,なくてはならない材料だ。 しかしLCPは溶融時に液晶の状態であるため,一般の樹脂と挙動が異なり成形射出中の速度が一定ではない。 他社のソフトの中にはLCPを特別扱いしているものもあるが,セイロジャパンのMoldex3Dは他の材料と同等に取り扱えて,精度の良い結果が得られたという。

 

携帯電話機製造の短納期化要求が強まり,成形のカットアンドトライを減らす必要がますます出てきたこともあり,最終的に2005年5月にMoldex3Dを導入した。

 

大幅に設計コストを短縮

 

主力製品の一つであるFPC用コネクタ0.5mmピッチに対してMoldex3Dを採用した結果,解析にかかる時間は大幅に減った。「樹脂の流れを目で見 ることは容易ではありません。従来は過去の事例を参考にした上で金型を製作しても,作りかえることがありました。これがシミュレーションで代用できるよう になり,時間短縮の面でも金型製作コストの面でもおおいにプラスになっています」(生産技術開発第一部 主任 松本靖洋氏)。


(主力製品の一つであるFPC用コネクタ 0.5mmピッチ,樹脂部分はナイロン製)  
CADシステムとして導入している「SolidWorks」との相性もよく,トラブルらしいトラブルはない。また,なんといってもシミュレーション結果の 精度がよいという。最初はシミュレーションと成型品が一致しないこともあったが,メッシュの切り方などを検討し,品種によっては思い通りに使用できるよう になった。「シミュレーションを活用し金型を一回で完成させることもできる段階になっています。将来は樹脂成型の全製品への適用も視野に入れていま す」(桑原氏)。

 

同社のMoldex3Dの使用環境はワークステーションによるパラレル・コンピューティングだ。メッシュ作成に要する時間は標準で半日,解析は1日から長い場合は1週間に及ぶこともある。複数個を一度につくる多数個取り金型の場合はメッシュを作成した際のエレメント数が特に大きくなる。800万エレメント以上になることもあるが,「大きな解析データを何本も流して,数日間パソコンの前を離れることも可能です。解析の難しい部分はタイムステップを細かくするなどソフトが自動で対応するため,解析エラーで途中終了するということもめったにありません」(井上氏)。

 

ユーザー同士の情報交換会も活発

 

直感的セイロジャパンのサポートはとても丁寧で,相談をすればすぐ答えてくれるという。要望や問題点を伝えれば,次のバージョンアップやサービスパックですぐ反映されていることもある。また年1回のバージョンアップに合わせて行われるユーザー集会も見逃せない。50~60人ほどのMoldex3Dユーザーが集まり,セミナーや情報交換会が丸一日かけて行われる。「何といっても実際に使用している者同士の情報交換に勝るものはありません。問題解決やよりよい使用方法を模索するために非常に役に立ちます」(井上氏)。

 

また,セイロジャパンが台湾CoreTech System社の開発エンジニアを日本に常駐させたことも大きくプラスになりそうだ。 エンジニアが直接ソフトを使用している現場に向かい,活用方法を質問したり要望を伝えたりできるからだ。

 

「もう少し処理速度が上がれば,さらに使いやすくなるでしょう。また今後はWeb上でQ&Aなどの情報公開がいっそう充実することを期待したいですね」 (事業統括部 事業推進部 要素技術開発課 新開芳信氏)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※本記事は日経BP社WEBサイト”Tech-On”に掲載された記事広告を転載したものです。

 


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