Blackcad、Moldex3Dによる新型コロナウイルス対策用フェイスシールドの製造に成功

著者:Black Engineering CAEエンジニア Przemyslaw Narowski
顧客情報

Blackcad Engineeringでは、技術とサービスの向上への継続的な取り組みを企業目標としています。Blackcadでは、3Dスキャン、3Dプリント技術のシミュレーションとシステムの最適化に力を注ぎ、お客様に包括的かつハイレベルなエンジニアリングサービスを提供するために、プロフェショナルな人材を募集しています。(出典)

概要

新型コロナウイルスの流行により、多くの機関が「COVID-19対策イニシアチブ」に参加する中、産業界もまたマスクやフェイスシールドといった個人用保護具の製造に取り組んでいます。本事例のフェイスシールドは、スピーディかつワンステップでの生産が可能な保護具という現在のニーズから生まれました。従来、このような製品は、シールド、ヘッドキャップ、ストラップの少なくとも3つのパーツから構成されていました。Blackcadでは、射出成形完了後に組み立て工程を経ることなく、直接使用可能であることをこの製品の設計目標としました。

課題

  • 一体成形可能なフェイスシールドの製造。この製品は本来、プレスや3Dプリントで製造されている。
  • 使用時の快適性を決定づける、フェイスシールドの光学特性の確保。

導入ソリューション

Moldex3D Professionalソリューションを用いた成形シミュレーションでは、設計案をモデル化して、成形プロセスにおける典型的な不良(過度なスプルー圧力など)を特定することができたほか、射出成形部品の光学特性のシミュレーションでは、製品不良を解消することもできました。

成果

  • 射出成形製品の生産不可能な不良の早期発見
  • 製品の使用に問題となる光学特性不具合の特定に成功
  • 感染拡大防止に役立つ保護具の製造

ケーススタディ

本事例でBlackcadは、人の頭を直接「包み込む」ことができ、一体成形で生産後に組み立てなしに直接着用できる、射出成形によるフェイスシールドの設計に取り組みました。

 

最初に、Moldex3Dの標準FPW(流動、保圧、そり変形)シミュレーションを行ったところ、その結果からスプルー圧力のピーク値が非常に高い (136MPa) ことが確認されました。

そのため、Blackcadは、全体の厚みを2.0mmから1.5mmに調整し、再度FPWシミュレーションを行いました。その結果、スプルー圧力はわずかに改善されたものの、ショートショットが発生していました。

その為、続いてストラップの溶融樹脂分布を均一にする新しい流動ガイドを追加しました。

この変更により、キャビティ内は完全に充填されましたが、スプルー圧力は依然として非常に高く、流動時に残留応力が生じて新たに設計されたフェイスシールドの光学特性の低下につながる恐れがありました。

そこで、Blackcadは材料サプライヤーと相談し、元々使用していたTPEを粘性の低い材料に置き換えることにしました。新たにANSAを用いてソリッドメッシュモデルを作成し、Moldex3Dで再度、流動、保圧、そり変形、光学のシミュレーションを行いました。

解析の結果から、スプルー圧力、残留応力、最終的な光学位相差のすべてが改善されていることが確認できます。

結論

Moldex3Dシミュレーションを用いる事により、製品の品質問題につながる潜在的不具合の早期発見が可能となります。さらに、製品の光学特性を事前にシミュレーションすることで、Blackcadは成形上の典型的な問題を予測し事前に対策を講じる事で、不良品を避けることができます。これはBalckcadの顧客にとっても大きなメリットとなっています。

 

Black Engineering CAEエンジニア Przemyslaw Narowski

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