コアテックシステム技術サポートチーム チーフエンジニア 張文彦
プラスチック光学部品は高コストパフォーマンスと適用性を備えた加工特性により、従来のガラス材料に代わってオプトエレクトロニクス、3C、自動車などの分野で幅広く使用されています。ですが、厚みのある部分と薄い部分の差が極端な製品の設計アプリケーションでは、射出成形プロセスでジェッティング、エアトラップ、ヒケ、ボイドなどの成形不良が発生しやすくなり、さらには、長時間にわたる冷却や過度の体積収縮も製品精度や生産効率の向上を困難にする要因となっています。
多層射出成形は光学製品の極端な設計に対するソリューションの1つであり、極端な設計の製品では積層をA-B層に分解して順に成形することで、厚みのある部分の成形課題を改善します。Moldex3D光学解析ではマルチコンポーネント射出成形のA-B層の成形プロセスで生じる流動残留応力と熱残留応力の予測をサポートし、最終製品の縞次数とフリンジパターンを提供します。Moldex3Dによるマルチコンポーネント射出成形の光学解析について以下で説明します。
ファーストショット(A層)解析
ステップ1:ファーストショットシミュレーションのためのモデルと解析Runを準備する
まずはMoldex3D Studioでファーストショットの射出成形解析Runを準備します。選択した材料ファイルには無配向屈折率、流動誘起応力光学係数、熱誘起応力光学係数などのパラメータを含む光学特性のタブが必要となります。
ステップ2:ファーストショットシミュレーションのための計算パラメータと解析パラメータを設定する
計算パラメータの粘弾性/光学タブで、流動/保圧段階での流動残留応力予測と冷却段階での流動残留応力予測にチェックを入れます。すべての解析設定が完了したら、計算のためRunを送信します。計算が完了すると、流動、保圧、冷却解析にそれぞれ流動誘起残留応力の結果項目が表示されます。
セカンドショット(B層)解析
ステップ3:セカンドショットシミュレーションのためのモデルと解析Runを準備する
次にセカンドショットの解析Runを新たに準備します。モデルには製品(B層)とインサート(A層)を含んでいる必要があります。ファーストショットの解析と同様に、光学特性を備えた製品と、インサートの材料ファイルを選択します。インサートの形状と材料はファーストショットと同じでなければなりません。
ステップ4:セカンドショットシミュレーションのためのマルチコンポーネント射出成形の光学解析を設定する
解析シーケンス設定で非定常解析・光学解析を選択し、光学解析で流動誘起応力と熱誘起応力の影響を完全に考慮できるようにします。
計算パラメータ設定では、ファーストショットの成形の影響を考慮するため、セカンドショットはマルチコンポーネント射出成形(MCM)タブの前のショットのRunIDを参照するにチェックを入れ、ドロップダウンメニューからファーストショットの解析Runを選択します。
ステップ5:セカンドショットの粘弾性/光学計算パラメータを設定する
ファーストショット解析と同様に、粘弾性/光学タブで、流動/保圧段階での流動残留応力予測と冷却段階での流動残留応力予測にチェックを入れます。次に、下方にある光学解析予測にチェックを入れ、追加ボタンをクリックして光伝播方向番号を追加し、製品に照射する実験光源のベクトルを入力します。他の光学計算パラメータについては、今回はデフォルト値のままにしておきます。
ステップ6:MCMと光学解析を実行し、その結果を確認する
セカンドショットの他の解析設定がすべて完了したら、計算のためRunを送信します。計算が完了すると、光学解析に製品とインサートの屈折率、位相差、縞次数、円偏光のフリンジパターンが表示されます。このときの光学解析結果は、パーツとインサートの双方に対する成形プロセスと光伝播の総合的な影響が考慮されています。
その他の機能-平面偏光解析
Moldex3Dの光学解析の標準結果項目では、フリンジパターンには等色縞と呼ばれる円偏光のパターンが表示されます。このパターンは平面上での製品回転角度によって変化することはありません。平面偏光で得られたフリンジパターンには等色線と等傾線の両方が含まれ、等傾線は平面上の製品の配置角度に関係します。
Moldex3Dで平面偏光のフリンジパターンを取得するには、解析前に計算パラメータの粘弾性/光学タブで平面偏光器設定にチェックを入れ、光の伝播方向に対して垂直な平面上の製品回転角度を入力する必要があります。
解析が完了すると、光学解析結果項目に等傾線と平面偏光パターンを含む平面偏光解析の結果が追加されます。