パッケージングプロセスにおいてICチップがエポキシ樹脂の流動によって生じるワイヤースイープの変位量と挙動から受ける影響を予測するために、現在Moldex3D ICパッケージングモジュールではMoldex3D線形ソルバーをデフォルトとして設定しています。線形シミュレーションは小さな変形解析をスピーディに行うことができ、ワイヤースイープの結果をすばやく取得することができます。けれども、現在よく見られる充填解析の事例において、ワイヤースイープは大きな変形に基づく結果となっているために、線形解析の結果の値を用いると全体の変形量を過大視しやすくなってしまいます。そこで、Moldex3Dはワイヤースイープ予測を改善し、より正確な結果を得られる非線形解析オプションを追加しました。
Moldex3D ICパッケージングモジュールでは、ANSYS、ABAQUSの外部の応力解析ソルバー2種をサポートし、ワイヤースイープ解析を幾何学的非線形、材料非線形の変位計算の2タイプに分けることができます。Moldex3Dの内蔵ソルバーを使用する場合、幾何学的非線形の計算はすでに追加されていますが、材料特性については線形計算となっています。各種ワイヤー解析ソルバーがサポートする線形、非線形解析状況は下表のとおりです。次にMoldex3Dソルバーの非線形ワイヤースイープ解析の操作手順と検証結果から、より踏み込んだ解析結果の比較を提示します。
応力ソルバー | 非線形計算 | 線形計算 | |
幾何学的非線形 | 材料非線形 | ||
ANSYS | V | V | V |
ABAQUS | V | V | V |
Moldex3D | V | V |
各応力ソルバーのワイヤースイープ解析のサポート項目
Moldex3Dソルバーのワイヤースイープ非線形計算の設定手順:
ステップ1. ICモジュールの計算パラメータ設定ウィンドウ内のパッケージングタブで応力ソルバーをMoldex3Dに設定します。
ステップ2. ワイヤースイープ解析の幾何から非線形を選択し、ウィンドウの一番下にある確認をクリックして計算パラメータ設定を完了します。
ステップ3. すべての設定が完了すると解析順序の設定が起動し、充填解析が完了するとワイヤースイープ解析が実行されます。解析開始をクリックすると計算が実行されます。
注意:ワイヤースイープ解析を実行するには、あらかじめ充填解析結果が必要となります。
検証と結果分析
ANSYSとMoldex3Dの2つの非線形応力ソルバーの解析結果から、ワイヤースイープの変位量と分布はいずれのソルバーを使用した場合も良好で、変位結果も一致していることが確認できます。このことは、大きな変形の影響下では、ワイヤースイープは主に幾何学的非線形性の影響を受けることを意味しています。また、Moldex3Dソルバーはワイヤー数の多いモデルになるほど、ANSYSよりも計算にかかるCPU時間が大幅に短いことが統計図からも確認できます。
モデル | ワイヤー数 | Moldex3DソルバーのCPU計算時間 | ANSYSソルバーのCPU計算時間 |
1 | 21714 | 9185 | 242966 |
2 | 4491 | 5153 | 38606 |
3 | 1075 | 1054 | 1145 |
4 | 76 | 106 | 91 |
5 | 64 | 45 | 71 |
6 | 16 | 4 | 12 |