流動解析とインダストリー4.0におけるスマート製造(2):スマート射出成形機とその調整原理

Tober Sun

前回の記事ではインダストリー4.0における仮想空間と実空間の統合概念から、射出成形プロセスにおける装置の動作と製品品質の密接な関係を理解してきました。正確な流動解析には、射出時のスクリューの加減速、保圧時の装置の応答、および装置の過度な射出圧力を回避するための保護動作といった装置の動作を考慮する必要があります。

現在、射出成形設備は射出成形機を中心としており、そのためインダストリー4.0におけるスマートマシンは次のような射出成形機の設計に多く応用されています。1、射出成形機による各種生産管理情報の送信。2、射出成形機と周辺機器間のデータ交換。3、成形プロセス技術におけるスマート調整。その中でも成形プロセス技術のスマート調整は、射出加工産業の今後の発展を左右するものと言えます。現在に至るまで、この業界では人的経験に大きく依存しているため、流動解析もスマートマシンもその経験に取って代わることができないでいます。けれども生産情報の収集とデータの帰納的アプローチにより、自動試作の未来はそれほど遠くないと考えています。本稿では、現在各射出成形機メーカーが射出成型プロセスにおいて収集したデータをどのように応用し、製品品質の安定性を向上させているかを紹介します。

製品品質の安定性を向上させるには、成形パラメータを適切に調整し、環境変動による品質の不安定性を相殺することで可能となります。成形技師は経験から、夏と冬、朝と晩の環境温度による影響を考慮した成形パラメータの調整を行う必要があることを知っています。スマートマシンでは科学的な方法を利用して、成形サイクルごとに成形条件を直接変更します。現在主流となっている技術には、Engel (iQ flow control)、Wittmann Battenfeld (HiQ-Flow)、KraussMaffei (APC)があります。Wittmann Battenfeld のHiQ Flowを例に挙げると、射出圧力を監視測定し、良品の射出圧力曲線を基準として、良品範囲内での射出圧力変動の上下限を設定します。金型、プラスチック材料の粘度、射出速度が変化しなければ、射出圧力が変化することはありません。けれども、金型環境(マルチキャビティのフローバランス、金型温度)、プラスチック材料の粘度(材料温度の均一性、劣化、異なるバッチ)が変化した場合は、同じ射出速度設定であっても、射出圧力曲線は良品範囲から外れ、品質が不安定となります。

射出圧力はせん断速度と粘度の積であり、射出圧力の低下が観察されたとしても、装置の射出速度が変わらずに維持されている場合は、溶融材料の粘度が低下したことを表しており、その多くは温度の上昇によるものです。このとき、溶融材料の密度も高温によって低下します。そのため、製品重量を変化させたくない場合には、射出ストロークを増加するか、VP切り替えポイントを遅らせる必要があります。どの程度遅延させるかは、成形圧力が良品の基準線からどの程度逸脱しているかを見て決定します。各メーカーの射出成形機は異なる方法を採用しており、Battenfeldの調整は圧力を利用したもので、ポジション下の総面積と等しくなるようにし、射出時の仕事量(Work of injection)もまた、等しくなるように補正されます。KraussMaffeiの調整はPVT特性に基づいた補正で、射出圧力の差が温度変化によるものである場合、その温度下での材料密度(比容積)も変化します。材料密度が変化すると、製品重量を保つためにVP切り替えポイントと保圧圧力の変更が必要となり、各種材料によりPVT特性が異なるため、材料の種類を入力する必要があります。下表は2018年までの主要メーカーのプロセス調整技術をまとめたものとなります。

メーカー 調整可能な成形条件 排除したい環境変動
Engel VP切り替えポイント、保圧圧力 粘度
Wittmann Battenfeld VP切り替えポイント、保圧圧力、スクリュー可塑化、逆止弁閉速度 粘度、クッションストローク
KraussMaffei VP切り替えポイント、保圧圧力 粘度、逆止弁

インダストリー4.0における射出成形機の応用は、すでに単純な溶融運動エネルギーの提供からセンサーとしての役割へと発展しています。溶融材料の金型への射出時の状況、さらには温度、圧力下における溶融材料の状態変化を理解することで最適なプロセス調整を行うことができ、スマートマシンの目標を達成することができます。プロセス中の調整は予測製造です。李傑教授の見解を再度引用すると、予測製造は製造自体に価値を生み出すだけでなく、製造プロセスには自省的な機能を備えていることが必要とされます。また、製造プロセスにおいて、設備本体を含むシステム全体が実際の変化に応じて即座に対応、調整できるようにする必要があります。先日の両岸企業家サミットにおいて、フォックスコン・インダストリアル・インターネット(FII)の副董事長に就任したばかりの李傑教授は、スマート製造は問題を解決するために生まれたのではなく、問題の発生を事前に感知、予測し、過去に解決できなかった問題を解決するために生まれたと述べており、インダストリー4.0の時代は予測製造の時代であると言えるでしょう。

孫士博 博士
コアテックシステム(Moldex3D)
材料研究センター 主任
アメリカ・コネチカット大学高分子科学博士、主な研究分野は、複合材料、生物医学材料、生分解性ポリマー、工業デザインにおけるプラスチック材料の応用、高分子レオロジー、ポリマー加工、ポリマー物理特性など。コアテックシステムテクニカルサポートマネージャー、自動車プロジェクトなどに携わり、長期にわたってコアテックシステムのグローバルテクニカルコース、セミナーなどの専任講師を務めました。

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