CoreTech System製品事業部担当副社長 簡錦昌 |
プラスチック射出成形用金型の開発プロセスでは、常に改善がなされています。開発プロセスでの製品設計、金型設計、金型製造および現場での試作の各工程において、各々が異なる専門のチームメンバー、異なるタスクがあり、改善が行われることで最終的にようやく金型が完成し量産できるようになります。この開発プロセスを効率的に管理し共有する方法は非常に重要な課題です。
上記の金型設計・開発プロセスの管理に一般的なPLMシステムを用いることもできますが、汎用のPLMシステムは通常膨大であり、導入コストが相対的に高いことが欠点です。また、汎用のシステムであるため、プラスチック用金型開発の標準フローでの使用に完全に適合させることはできません。そのため、プラスチック用金型開発プロセス向けにカスタムメイドされたジョブ管理システムがあると、より質の高いワークフロー管理、プロジェクト管理および人的資源管理を提供することができます。また、産業および企業の環境が異なれば必要な開発プロセスにも違いが生じるため、特定のカスタマイズが必要になります。
これらのニーズに応えるため、Moldex3D iSLM(intelligent Solution Lifecycle Management)は、タスク管理の機能を提供し、ユーザーが企業内部のニーズに基づいて異なるタスク項目をカスタマイズできるようにしています。システムでは作業分解図(WBS:Work Breakdown Structure)方式で金型開発に必要な項目を都度展開することができ(図1)、それぞれのサブタスクにおいて、ステータス、優先度、担当者、完了予定日などを定義することができます。こうすることで、それぞれの金型がそのプロセスにおいて費やした回数や時間を明らかにすることができます。そのほか、解析実施の詳細説明および成果のメモや画像、またはその他のファイルを添付(アップロード)することができ、リアルタイムに確認を行ったり(図2)、システムを通じてタスク項目と対策効果を効率良く運用することができます。
図1 WBS方式による金型開発タスクの展開
図2 各タスク項目において必要事項のメモや画像の保存が可能
タスク項目リスト(図3)から、各メンバー間で現時点での作業の進捗状況や開発作業が行われている金型を共有することができます。また、それぞれのタスクの完成予定時期やタスクが費やしている時間の情報を把握することもできます。リストとスケジュール表を使用してこれらの作業情報を確認することで、メンバーを増員し仕事の割振りを行うことができ、監督者は作業の進捗状況を確実に把握しワークフロー全体をよりスムーズなものにすることもできます。
図3 リスト方式による個人の進行中のタスク項目の表示
完成済みのタスク項目について、可視化された棒グラフ(図4)を通じて監督者がチームの月別の完成済みプロジェクトのタイプと数を素早く確認し、開発全体が予定どおりに進行しているかを知ることができます。またグラフを通じて各メンバーの作業完成状況および貢献度を確認することもできます。これらの記録は、その後の作業の割り振りに役立てられるだけでなく、メンバーに対する教育訓練や報奨制度にも有効利用可能なものになります。
図4 棒グラフによる完成済みの項目および数の表示
最後に、上級管理職の方もグラフを通じて企業内部の開発中の各金型の開発進捗状況を確認することができ(図5)、クリックして開発フローの詳細を展開すると、ボトルネックになっている工程を素早く把握することができます。時間どおりに完成していないタスク項目がある場合は注意が促されます。前述の個人のタスク項目の情報と組み合わせることで、監督者は迅速に人員の配置を行うことができます。
図5 各金型の開発進捗状況の確認
タスク項目の管理は常に開発プロセスにおける重要な要素です。優れたタスク管理システムはチーム内の効率的な作業の実行および記録に役立てることができるほか、開発におけるチームワークを高めることもでき、企業にとってのデータ資産になります。これらの履歴は将来の新製品開発における重要な参考資料にすることもできます。