従来、プラスチック部品の充填シミュレーション技術開発では、充填プロセスのみに焦点を当ててきました。通常、ランナーの解析を行う際は、1次元ビーム要素を用いて単純化したモデルを使用します。このとき、ランナー出口から部品に流れる樹脂の速度や圧力などの流入条件の数値を仮定して数値計算を行います。近年、ランナー解析が注目を集める中で、3次元ランナーメッシュ技術の開発が進み部品だけでなくランナー部分の充填プロセスの解析が可能になっています。ランナー内の充填挙動と温度変化を知ることで、せん断熱により発生する不均一な温度分布やマルチキャビティ金型への充填のばらつきなどを解析する事が可能です。
3Dランナー内のメルトフローの正確な解析には、メッシュ品質が非常に重要です。従来、Moldex3Dではスイープなどのツールを使って3Dランナーのソリッドメッシュを生成する前に、2Dの断面メッシュを使って1Dカーブを準備する必要がありました。比較的単純なランナー設計では、Moldex3D DesignerのMoldex3D Runner Wizardによりランナーメッシュの作成が可能です。この機能では、ワイヤーフレームとパラメーター(ランナー径など)を用いて3Dランナーメッシュの生成を半自動的に行う事が可能です。このようなツールは樹脂流動解析ソフトに必要不可欠であり、その精度は解析結果に大きく影響を及ぼします。
しかし、金型成形技術の発展に伴ってランナー設計も複雑化しています。複雑な3Dランナーメッシュを生成する際には時間とコストが必要となります。
この問題を解消するため、Moldex3D R15ではランナーモデルの高品質な3Dメッシュを短時間で生成する機能が実装されています。六面体ソリッドメッシュ(Hexa-based solid mesh)、節点タイプの指定(Node types)、節点プレビュー(Node Preview)の各機能について、以下に詳細を説明します。
ランナーシステムのテンプレート(六面体)
六面体ランナーメッシュの利点として、レイヤーメッシュの生成に要する要素数が少ないことが挙げられます。高解像度・高精度のメッシュで構成されているため、作業時間と解析時間の短縮が可能になります。
Fig. 1 左図:Moldex3D Designer R14.0で生成したランナーのソリッドメッシュ(三角柱ベース)。
右図:Moldex3D Designer R15.0で生成したランナーのソリッドメッシュ(六面体要素ベース)。
節点タイプの結合
ランナーのカーブ接合部では、接合するカーブの数、角度、ランナータイプに応じて使用可能な節点タイプが自動的に表示され、ユーザーはその中から使用する節点タイプを選択します。Fig.2では、T字部を3本の線と3つの節点タイプで接合しています。このときの節点プレビュー表示とソリッドメッシュも合わせてFig.2に示しています。
Fig. 2 ランナーの解析:使用可能な節点タイプを自動表示
リアルタイム節点プレビュー
Moldex3D R15.0には、リアルタイム節点プレビュー機能が実装されています。ランナーメッシュの生成を待たずに節点の状態を確認できます。さらに、設定されたノード形状に従いランナーメッシュが生成されるため、形状が変化することがありません。一般的なランナー設計に対しては六面体メッシュを用いたモデルが作成可能であり、複雑なランナー設計ではBLMメッシュが作成可能です。
各ランナータイプにおける、ランナーカーブパラメーター設定結果・節点プレビュー・六面体メッシュの結果をFig.3 に示します。Moldex3D R15ではゲート機能も強化されており、メッシュ生成時にゲートノードタイプの選択が可能です(Fig. 4)。
Fig. 3 上段:ランナーのカーブパラメーター設定結果、中段:ランナーの六面体メッシュの節点プレビュー結果、
下段:メッシュ生成結果
Fig. 4 上段:ゲートの節点パラメーター設定結果、中段:ゲートの六面体メッシュの節点プレビュー結果、下段:メッシュ生成結果
Fig. 5に示すように、六面体メッシュではより少ない要素数でより高品質なメッシュ生成が可能です。これにより、解析精度の向上も期待できます。
Fig. 5 六面体メッシュによるランナー解析:メッシュ数の低減とメッシュ品質の向上
Moldex3D R15.0では高品質メッシュの高速生成が可能です。高解像度の六面体メッシュを自動生成します。元のランナー形状に忠実なメッシュを使用することで、より高精度の解析が可能になります。ランナー形状が複雑な場合であっても、Moldex3D R15.0は時間とコストの大幅な削減を実現します。