スマートなデータマネジメントと同期

コアテックシステム第四研究開発部 サブマネージャー 陳姞芳

序文

一般的にパーツ設計、金型製造から量産前の試作にいたる完全な射出成形プロセスには、通常、大量のデータパラメータと技術ポイントが必要とされます。開発プロセスにおいてチームメンバーが従来の紙による記録を行っている場合、管理が難しく、追跡しにくく、データのリアルタイム性の欠如、エラーが発生しやすいといったデメリットが生じることがあります。紙を使用することによって生じるさまざまな不都合を解消するために、Moldex3Dは金型設計とプラスチック成形のためのiSLMデータ・マネジメント・プラットフォームをリリースしました。開発チームの設計プロセス全体の記録をサポートするとともに、ワークフローにおける全データをシステムに集約し、視覚化することで、開発プロセス全体とデータを一度に明確に確認することができ、チームの作業効率が向上します。

図1 iSLMデータ・マネジメント・プラットフォームは、完全なプラスチック射出成形プロセスの記録に役立ちます

データ視覚化の重要性

iSLMプラットフォームに保存・記録されているさまざまなデータは、射出成形プロセスにおいて極めて重要な資産であり、これらの大量で複雑なデータをグラフや画像などのよりわかりやすい形式に変換することは、チームにとって大きなメリットとなります。例を挙げると、プラットフォームのプロジェクト管理機能では、品質ダッシュボード(Quality Dashboard)はCAE専門家の専門知識を製品設計ライフサイクルの具体的な設計ガイドラインとして使用するとともに、CAE解析ワークフローに適用してチームの解析結果の判断やパラメータ設定を支援することで、生産効率を向上させ、さらなる可能性を探求します。タスク管理機能では、個人の作業項目は優先順位ごとに色分けされ、画面上に視覚的効果をもたらすことで、個人やグループの作業進捗度を効果的に管理することができ、作業タスクを追跡しやすくなります。また、2023年に新しくリリースされたダッシュボード機能(Dashboard)でもより高度で包括的な表示方法のデータ管理を提供し、単調で複雑な詳細データを活力の感じられるさまざまなグラフで表現することにより、チームの各メンバーは美観と実用性を兼ね備えたビジネスデータの閲覧に加え、データに関する情報や変化をより迅速に入手できます。

図2 品質ダッシュボード作成画面

図3 iSLMプラットフォームのタスク管理画面

iSLMダッシュボード管理機能とアプリケーション

iSLMプラットフォームのダッシュボード管理機能は実際のところどのように役立つのでしょうか?iSLMナレッジデータベースでデータの検索やマシンラーニングのような高度な研究を行う必要がある場合を考えてみてください。必要に応じて特定のプロジェクトをフィルタリングし、CSVファイル形式でデータレポートにエクスポートしますが、毎週定期的に新しいデータに更新する必要がある場合、プロジェクトのフィルタリング、CSVファイルへのレポートのエクスポート、データの更新といったフローの繰り返しは避けられず、管理上非常に非効率的です。iSLMのダッシュボード管理機能では、ユーザーはまずグラフを作成し、次にiSLMに保存されたデータをグラフにリアルタイムに同期させ、確認・閲覧用にチームの各メンバーに提供します。このアプローチは、データ収集を可視化し、データアプリケーションをパーソナライズするという目標を達成するのに役立ちます。

前述したグラフカスタマイズ機能では、表示するデータを選択後、円グラフ、折れ線グラフ、レーダーチャートなどの9種類からグラフの種類を選択し、必要に応じてフィルタ条件を設定します。作成が完了すると、チームの各メンバーはダッシュボード管理画面からそのグラフを検索・確認することができるようになります。また、ダッシュボード管理画面では、関連するグラフをグループ化することもでき、グループで表示することにより、重要な情報を一目で把握することができます。以下ではダッシュボード機能の例を紹介します。

  1. CAEと試作のデータ比較

ダッシュボード画面では、シミュレーションデータに加え、試作とCAEのデータを同時に表示することもできます。自動車バンパーの設計・生産を例に挙げると、下図に示すように、ユーザーにモデル作成時のランナー設計やデータ選択において参考となる方向性に加え、シミュレーション結果と試作結果の相互比較が提供されます。これらの情報から、チームのメンバーは生産のボトルネックをより正確に特定し、主要な改善分野を見つけ出すことができます。

図4 CAEと試作のデータ比較ダッシュボード
  1. 管理者用統計データ

管理者は関連するグラフを作成することで、現在のプロジェクトのステータスと各部門の実施状況を把握し、プロジェクトの進捗を効果的に追跡して、各作業の円滑な実施を確保することができます。下図はプロジェクト管理の観点から設計されたデータ統計表で、この例には iSLMのケース数、製品カテゴリ、作成時間、担当部門などのデータが含まれています。ユーザーはウェブページから開発データにアクセスし、すべてのデータをリアルタイムに入手することができます。

図5 管理者の統計データダッシュボード

AI人工知能の発展とデータ収集の相関関係

また、特に注目すべき点として、科学技術の隆盛にともない、近年ではAI人工知能アプリケーションが幅広く浸透し、わたしたちの生活や働き方を徐々に変えています。現在の科学技術分野で最も盛んに取り上げられるトピックの1つであり、将来の開発傾向には、「自動化とマシンラーニング」、「人工知能とビッグデータ」、「自然言語処理」、「人工知能とIoT(モノのインターネット)」などが含まれます。以上の点からマシンラーニングやビッグデータ、IoTのいずれについても、事前に大量のデータを収集する必要があり、データが多ければ多いほどAIモデルの学習能力が高まります。ですが、「量」だけでなく、データの「質」も非常に重要であり、収集したデータの質が悪ければ、役に立たない、さらには間違った結果を生むことになりかねません。そのため、AI技術の開発には、高品質な大量のデータの収集が重要となります。

結論

iSLMプラットフォームに保存されている大量の複雑なデータを統合し、理解しやすい画像コンテンツに変換するデータの視覚化は、AI技術におけるデータ収集の最初のステップを完了するのに役立つとともに、データのパターン、傾向、相関関係をより特定しやすくし、さらには開発チームが生産や管理の意思決定を迅速かつ正確に行うことも可能にします。プラットフォームの既存の品質ダッシュボードのスコア基準とタスク管理のカード追跡は、パラメータ設定のベンチマークを提供するだけでなく、管理者の作業効率も向上させます。また、ダッシュボード機能は、メンバーのウェブ上データへのオンラインアクセスもサポートし、距離や時間の制約を打破し、同期更新されたデータのリアルタイムでの入手を可能にします。このほか、仮想・現実データを組み合わせて、可視化されたデータをクロスモールドプロジェクトのデータ表示に適用することができ、チームメンバーが収集したデータの比較に役立つほか、パーソナライズされたスマートデータアプリケーションの実現が可能となります。


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