CAEを用いたホットランナーシステムの設計:成形部品の品質向上

プラスチック射出成形業界では、製品の品質改善・コスト削減のため、ホットランナーシステムが広く用いられています。ホットランナーシステムの利用には、樹脂材料の節約、生産サイクルの短縮、応力の低減、エネルギー消費の節約など、多くの利点があります。ホットランナーシステムは、ノズルの設計の違いによって、オープンゲート式ホットランナーとバルブゲート式ホットランナーシステムの2つのタイプに分かれます。オープンゲート式ホットランナーシステムは、溶融樹脂をキャビティ内に直接注入するため、成形後の製品にゲート跡が残ります。バルブゲート式ホットランナーシステムは、バルブピンを使ってノズルの開閉を制御するため、チップに溶融樹脂の垂れ落ちや糸ひきは発生しません。バルブゲート式ホットランナーシステムは、さらにシステム駆動とプレート駆動の2つに分かれ、それぞれに特長があります。システム駆動のバルブゲート式ホットランナーシステムは、金型と結合しやすく、シンプルな構造で比較的低コストで導入できるため、主に大型製品向けです。プレート駆動のバルブゲート式ホットランナーシステムは、すべてのバルブピンを同時に作動できるため、複数キャビティの金型に適しています。ホットランナーの設計は、金型設計段階における最重要項目の1つであり、複数のホットランナーの設計を評価し、費用対効果が高く最適なソリューションを見出すことは、金型メーカーや担当者が取り組むべき課題となっています。

そのため、業界では、複数のホットランナーシステムの特長を予測・評価し、また最適なホットランナー設計を科学的に決定するためにCAEシミュレーション技術を活用しています。Moldex3Dでは、複数ドロップのホットランナーシステムにおいて、ノズルごとにオープンゲートまたはバルブゲートを指定可能です。また、成形条件の設定時にバルブゲートをグループ化することで、複数のバルブゲートを一斉に作動させることができます。バルブゲートの制御にフレキシブルかつ充実したパラメータ設定を利用することも可能です。まず、バルブゲートの初期状態(開閉状態)はグループ別に設定可能で、各バルブゲートグループには成形工程に応じて複数の制御点を設定できます。また、充填・保圧段階におけるバルブゲートの開閉切り替えのタイミングとして、オプションを6つ用意しています。さらに、ひとつのバルブゲートグループに複数タイプの制御オプションと制御点を考慮することができます。このように、Moldex3Dは高度かつ多様な設定が可能です。また、実際のホットランナーと同様に、保圧完了時にはすべてのバルブゲートが閉じるようにデフォルトで設定されています。

続いて、5本のノズルをもつLCDモニターの筐体の事例を紹介します。このケースではバルブゲート式ホットランナーシステムを使用し、シーケンシャルバルブゲートで制御することで、ウェルドラインの発生を防止しています。5つのノズルは、3つのグループに分かれています(Fig 1)。

Fig 1 LCDモニタ筐体の5つのノズル設計

Moldex3D成形条件ウィザードでは、各バルブゲートグループに6つの制御オプション(Fig 2)を提供しています。Fig. 2に、バルブゲートの制御オプションを示します:タイミング、フローフロント(節点による)、充填体積、タイミング(V/P切替後)、フローフロント(ホットランナーチップによる)、ラム位置等。以上の各オプションは併用可能であるため、ユーザーが自由に必要なパラメータを指定できます。

Fig 2 Moldex3Dバルブゲートの制御オプション

シーケンシャルバルブゲート(SVG)の仕様に従い、G1、G2、G3の順序でバルブゲートを開くことでウェルドラインを解消できました(Fig 3)。Group 1、2、3のバルブゲートは、初期状態で開いています。フローフロントがG2の節点に到達したタイミングで、G1が閉じ、同時にG2が開きます。つまり、このG2の節点がゲート開閉の「トリガー」です。同様に、G3が開くタイミングで、G2が閉じます。最後に、充填工程がV/Pの切り替え点に達したタイミングで、G1とG2が再び開きます。これにより、金型のキャビティに保圧効果が生じ、製品の収縮を補正します。また、Moldex3Dの流動解析結果に基づいてバルブゲート解放のタイミングを設定すると、金型試作段階の参考情報とすることができます。

Fig 3 LCDモニタ筐体のシーケンシャルバルブゲート制御

適切なホットランナー設計は、低コストで高品質のプラスチック射出成形品を製造するための重要な要素です。適切なホットランナー設計を見出すためには、Moldex3DなどのCAE解析ツールが非常に有効です。Moldex3Dのフレキシブルで充実した完全 3Dソリューションにより、シーケンシャルバルブゲートの制御やバルブピンの運動制御、共射出ホットランナーノズルなどのホットランナー技術を精度よく解析することができます。実際に金型やホットランナーシステムを製造する前に、製品ごとの仕様や要件に基づいてノズルタイプ、ランナー配置、動作順序などの最適化が可能です。


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