複雑な形状に境界レイヤーメッシュ(BLM)を使用し、流動解析の精度を向上する

複雑なモデルの場合、その形状特性を表すために高品質メッシュを準備することは、流動解析の精度向上に欠かせません。従って解析精度が最も重要視されるケースでは、最も適切なメッシュタイプを選択することが重要になります。

境界レイヤーメッシュ (BLM)とは ?

境界レイヤーメッシュ(BLM) は、複雑な形状モデルにとって強力なプリプロセスツールです。これを用いれば、オブジェクトの三角形のサーフェスメッシュから内部に向かってプリズムメッシュ層を作成できます。よってオブジェクトの内部を高品質な四面体メッシュで埋めることが可能です。金型充填ソフトウェアを含むCAE ソルバーは、等方性四面体メッシュよりも少ないBLM メッシュ要素を用いて、より高精度に変数分布をとらえることが可能になります。

例えば、複雑なコンフォーマル冷却回路に品質の良いメッシュを作成することは簡単ではありません。またコンフォーマル冷却回路は独自の形状であるため、メッシュ作成時に湾曲を適切に捉えることは簡単ではありません。このような問題を解決するためには、境界レイヤーメッシュ(BLM) を使用します。BLMメッシュは、充填時のキャビティ隣接部の温度や速度の顕著な変化を正確に捉えることができます。 よってユーザーは粘性加熱やそり変形問題を前もって予測することが可能になります。このようにBLM メッシュは複雑な形状を持つモデルにとって、強力なプリプロセスツールとなります。

use-boundary-layer-mesh-blm-for-complex-geometries-to-ensure-accuracy-of-mold-filling-analyses-1            use-boundary-layer-mesh-blm-for-complex-geometries-to-ensure-accuracy-of-mold-filling-analyses-2
Fig. 1: 複雑なコンフォーマル冷却設計(左)とBLM を利用した3D ソリッドメッシュ(右)

 

境界レイヤーメッシュ (BLM)の機能がさらに強化されました

しかし今までは、高品質なBLM メッシュを作成するには多くの労力がかかる上、エラーの発生率も高いという課題がありました。またBLM メッシュ作成に多くの時間と努力が必要でした。よって高精度なシミュレーション解析には BLM メッシュが必要であると分かっているにも関わらず、プリプロセスの時間と労力の削減を図るため、ユーザーはもっと簡単で短時間でできる方法を選択してきました。

メッシュ作成にかかる労力や時間を削減するために、BLM メッシュ作成機能の改良が何度も行われてきました:

  • 自動 BLM メッシュ作成機能:
    最も顕著な改良の1つは、自動 BLM メッシュ作成機能です。このテクノロジーは、高品質な境界レイヤーメッシュを簡単かつ効率的に作成できます。また高解像度ソリッドメッシュ作成機能が改良され、複雑な形状モデルにも適用できるようになりました。例えば設計変更で、ゲート位置を変更することがよくあります。しかしゲート位置を変更するたびにメッシュを再生成すれば、非常に時間がかかってしまいます。しかしこの自動 BLM メッシュ作成機能を利用すれば、キャビティモデルのソリッドメッシュはそのままで 、新たなゲート位置領域にメッシュだけを再生成できるようになります。この強化機能を使えば、高いメッシュ品質の実現と金型設計および工程設計の高速化が可能になります。
use-boundary-layer-mesh-blm-for-complex-geometries-to-ensure-accuracy-of-mold-filling-analyses_2016Fig. 2: 自動BLM mesh 作成機能: 元のゲート位置(A) →ランナーの BLM ソリッドメッシュを削除
(B)→ 新規ゲート位置(C) → BLM ソリッドメッシュの自動作成 (D)
  • メッシュ修正ウィザード:
    BLM メッシュ作成機能はメッシュ品質をモニターし、メッシュに欠陥があれば警告を発します。今まではこのようなメッシュ欠陥は手動で修正しなければなりませんでしたが、メッシュ修正ウィザードを使ってメッシュ欠陥を即座に修正することが可能になりました。これにより、高精度な金型充填シミュレーションが実現できます。
use-boundary-layer-mesh-blm-for-complex-geometries-to-ensure-accuracy-of-mold-filling-analyses-7Fig. 3: 便利な修正ウィザードを利用してメッシュ欠陥(フリーエッジ、t-連結エッジ、
要素のオーバーラップなど)を修正できます.
  • 複雑な形状のランナーや冷却回路に効率的にソリッドメッシュを作成:
    BLM テクノロジーの最近の開発により、CAD からランナーおよび冷却回路の形状データをそのまま直接読み込むことが可能になりました。こうして複雑なランナーや冷却回路設計のメッシュの作成が可能になりました。この改良により、メッシュ準備時間が短縮されただけでなく、樹脂と冷却液の流動を正確に予測することも可能になりました。
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Fig. 4: ランナーのソリッドメッシュ作成(左)と、温度解析結果(右)
  • 特殊な成形工程をサポート:
    BLM テクノロジーは、マルチコンポーネント成形(MCM)、3D冷却管、圧縮成形、粉末射出成形(PIM)、微細射出発泡成形(MuCell®)、ガスアシスト射出成形、ウォーターアシスト射出成形、サンドイッチ成形、バイインジェクション成形など、様々な成形工程に適用できます。

このように最新のBLM メッシュテクノロジーを利用すれば、BLM メッシュの準備にかかる労力と時間を効率化することが可能になります。またメッシュ品質も強化されています。特に、複雑な形状にメッシュを作成する場合、 BLM メッシュが最も適したメッシュタイプです。BLM メッシュは形状の特性を的確に捉えることができるからです。よって金型充填時の流動解析の精度が向上します。


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