コンフォーマル冷却回路の最適化 LEDレンズ残留応力の縮小

文責:CoreTech System技術サポート部エンジニア・鄧詠心

顧客情報

東莞理工学院は、東莞に初めて設置された普通本科大学です(中国における大学にいう「本科」とは、学士の学位を取得できる4~5年制のコースのことである)。2019年7月には、広東省で唯一の省市を共同設置者とする新型ハイレベル理工系大学モデル校に指定されました。2020年には、第一次国家知的財産権モデル高等教育機関リストに掲載されました(出典)。

概要

フレネルレンズにおけるレンズ表面の一方の面は滑面になっていますが、反対の面には同心円状に等間隔の鋸歯型の溝が施され、これらの鋸歯型の溝があることにより、特定のスペクトル領域に対する光学バンドパス(反射または屈折)の作用を実現できます。従来の研磨仕上げの光学機器の光学バンドパスフィルタは高価なものですが、フレネルレンズは効果的にコストを引き下げることができます。東莞理工学院はMoldex3Dを利用してフレネルレンズの冷却回路設計を最適化し、コンフォーマル冷却回路の設計に成功しました。この成功により、製品冷却後の温度分布が均等になりました。そして直交実験と組み合わせて最適な成形プロセスを手に入れることで製品の成形サイクルを最適化させ、製品の応力を引き下げました。結果、企業の生産コストの引き下げと、生産効率の引き上げへの貢献となりました。

課題

  • 製品外観における鮮明なウェルドラインやフローマークなどの欠陥発生を回避する
  • 製品の表面精度に対する要求を高め、表面粗さを20 nm未満にする
  • 製品冷却後の温度分布を均等にして成形サイクルを短縮する
  • 製品内部の残留応力を減少させる

導入ソリューション

陳磊博士らはMoldex3Dのコンフォーマル冷却モジュールおよび応力モジュールを用い、一般の冷却回路とコンフォーマル冷却回路を何度も検証してトポロジーを最適化し続け、冷却後の製品温度を均等にする目的を果たしました。またさらに、Moldex3Dの光学および残留応力についての予測を利用して成形プロセスの一層の最適化を行うことで、成形プロセスおよび冷却回路の最適設計を迅速に突き止め、製品の研究開発サイクルを大幅に短縮して産学官連携という目的を果たしました。

成果

  • 最適なコンフォーマル冷却回路レイアウトを突き止め、製品冷却後温度分布の不均等問題を解決
  • 製品冷却時間を15秒から13秒に短縮
  • ウェルドラインの温度を効果的に制御し、製品外観に及ぼす影響を縮小
  • 製品のサイズ精度要求を充足
  • 製品の残留応力の縮小および均等化

ケーススタディ

LEDとつなぎ合わせるLEDレンズは、光の利用効率および発光効率を高めるために使用します。外観品質に対する要求が高く、ウェルドラインやフローマークなどの表面の欠陥を避けなければならず、表面粗さについても20 nm未満に抑えなければなりません。この研究において、最適化前の冷却回路設計(図1)では冷却後の温度分布が不均等になり、そり変形および熱残留応力がさらに大きくなるほか、冷却時間も長くなっていました。

図1 最適化前の冷却回路設計

最適化前の冷却システムの温度および残留応力の分布は、それぞれ図2および図3のとおりです。これらの図から、熱量が球体の中心に集中し、そのために温度および残留応力の変化が大きく、光学部品においては欠陥とみなされるということがわかります。

図2 最適化前の冷却回路システムの温度分布

図3 最適化前の冷却回路システムの残留応力

研究チームは3Dプリントしたコンフォーマル冷却回路を用いて冷却効果の最適化を行い、計2種類の異なるコンフォーマル冷却回路 [図4の (a) および (b) ] を開発しました。図4 (a) の設計は、コンフォーマル冷却回路をバッフルの代わりに使用しています。図4 (b) の設計では、ウェルドライン付近に冷却回路を1つ追加しています。

図4 コンフォーマル冷却回路設計

最適化された設計は、最適化前の設計と比べて冷却後の温度が低くなり、分布も均等になっています(図5)。見込み冷却時間は15秒から13秒に短縮し、13%減少しました。また、製品の残留応力についても改善が見られ(図6)、より高い光学性能を発揮できるようになりました。

図5 コンフォーマル冷却回路設計採用後の温度分布

図6 コンフォーマル冷却回路設計採用後の残留応力

研究では偏光器を用いた成形実験を実際に行い、製品の光学的特性を確定させました(その結果は図7のとおり)。光弾性縞は、ランナーとゲートにのみ現れています。これはフレネルレンズが優れた光学的品質を持ち、Moldex3Dのシミュレーション結果の実現可能性が検証されたことを示しています。

図7 偏光器で実際に成形実験を行って製品の光学的特性を確定

結論

東莞理工学院はMoldex3Dを利用して解析を行い、コンフォーマル冷却回路の冷却設計を最適化し、蓄熱問題を解決しました。冷却時間を15秒から13秒に短縮させ、同時に製品の残留応力および屈折率も改善することで、最高の光学的品質を手に入れました。


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